DJ SACHIHOの2ndアルバム『eye of the typhoon』収録の目玉曲。発足直後のURBARIAN GYMクルーからZEEBRAと気鋭の若手AKEEM aka ILLMANAGOO、元Channel 5からはニトロ結成直後のDABOとTHINK TANK結成直後のKB（K-BOMB）、そしてオーストラリアから帰国間もないGOKUが参加。それぞれオリジナル色の強い５人であり、ビートに対するアプローチの違いを聴くだけでも興味深い１曲。

95年のキングギドラ『空からの力』のリリース後、各小節末で単語同士での押韻というベーシックなライムパターンが主流となっていた。この98年頃からは当楽曲でも１バース目を担当するAKEEMや餓鬼レンジャー、KREVA、LIBROなど次世代のラッパー達が、日本語と英語で踏む、名詞と動詞で踏む、語感で踏む、文節単位で踏むなど一段階上のライミングを試行錯誤し始めていた。


当楽曲では５人のラッパーが参加しているが、

①ZEEBRA立ち上げたURBARIAN GYMの門下生であり、ZEEBRAのスタイルに影響を受けた上で次世代の押韻を模索していたAKEEM
②マイクロフォンペイジャーからの影響も強く、東京の日本語ラップスタイルを引き継ぐDABO
③90年代はオーストラリアで生活し、シドニーAIM音楽大学卒で日本語ラップシーンの影響をほとんど受けていないGOKU
④完全オリジナルスタイルのKB
⑤アメリカで身につけた現地のラップの手法を日本語に置き換え、ベーシックとなる教科書的なラップスタイルを作り出したZEEBRA

といったそれぞれのラップスタイルのバックグラウンドを知ると、より一層この５人が１曲に介した面白みが増すだろう。特にKBからZEEBRAへの流れは、後にオーバーグラウンドとアンダーグラウンドの顔役となる両者が同じ曲の中でマイクを回していることにグッと来る方もいるだろう。


DABOバースで “インターネット” という単語が出ているが、現在では日常のインフラとなっているインターネットも当時は一部の人間だけが使う最先端の技術だった。まだインターネットへの常時接続サービスも存在しておらず、時期的には2ちゃんねる開設の１年前。

KBバースは後にリリースされるTHINK TANKの1st ミニアルバム『THINK TANK PT.3』収録の『Eat One』でも一部リリックが使い回されている。

ZEEBRAバースの ”最終走者 そう” の箇所では、意識的に連続して s の子音韻が踏まれている。

また “俺らの科学で全て頂く” の箇所にでてくる「科学（science）」はZEEBRAの敬愛するKRS-ONEが多用する言葉であり、キングギドラの楽曲でも科学関連のリリックが出るなど「科学」は当時のラッパーには重要なキーワードの一つだった。ZEEBRAは前年度の97年には日本初のラップ技術本『the Science of Rap / KRS-ONE』の翻訳にも関わっており、人一倍ラッパーたるもの科学を駆使しテクニカルでなくてはならないという気持ちがあったのだろう。


当楽曲に参加しているGOKUは2000年代前期より活動の舞台をヒップホップからハウスへと移し、cargoを結成（後にメンバー変更があり現在はGOKUのソロ名義）。リリースしたアルバムがiTunesチャートで７週連続１位を取るなどの成功を収め、現在ではクラブシーンの重鎮の一人となっている。


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【楽曲情報】BREAK POINT (DUNGEON REMIX) / DJ SACHIHO feat. AKEEM, DABO, GOKU, KB, ZRRBEA（eye of the typhoon 収録）
Lyrics By – AKEEM, DABO, GOKU, KB, ZRRBEA
Producer – DJ SACHIHO
Label – 日本コロムビア
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