啓蟄の音（けいちつのね）ー二十絃箏ソロと四面の箏のためのー
夏田昌和　2010年
日本音楽集団第232回定期演奏会
『現代に生きる私たちの音楽』
2021年2月15日（月）豊洲シビックセンター5階ホール　

二十絃箏独奏１：三宅礼子
箏２：伊藤麻衣子
箏３：石井香奈
箏４：渡辺正子
箏５：喜羽美帆
指揮：苫米地英一

【プログラムノート】
ここ数年「旋律と伴奏」という17世紀から19世紀に至る西洋音楽をはじめ様々な民族音楽においてもしばしば見られる伝統的な構造を敢えて用いつつ、微分音程や精妙なリズム表現によって充分に新しくかつ調和的に響く音楽世界を構築することを試みてきた。邦楽器を用いた初めての作品であるこの＜啓蟄の音＞もその延長線上に位置する。コンチェルトのようにも見える編成をもつこの作品において、しかし旋律と伴奏部はそれぞれソロとアンサンブルは左右2群に分かれてソロの各パートを補強する。いわばこのアンサンブルは、ソロ・パートを拡大投影するかのような役割を負っているが、その調律はソロに比べて2段階に少しずつずらされており、唸りを生じさせて音に厚みを加える効果も期待されている。倍音組織を基にした同系列の作品とは異なり、この作品においては旋律は3/4音と7/4音の交代による、また伴奏部は5/4音の累積による2種の非オクターブ旋法によっており、両者は1音おきに共通音を有している。楽曲形式は非常にシンプルなものであり、3フレーズからなり非拍節的な旋律（Ａ）によって3回繰り返すやや短めの後半部、そして冒頭の回想としての簡潔なコーダより成っている。
（作曲者　第198回定期演奏会　初演プログラムより）

撮影・編集／佃良次郎
撮影アシスタント／大野理津

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